
相手に気持ちを伝えられないことが不安でたまりませんでした。
OL生活2年目の頃、夫と知り合った時には、私は別の方と交際をしていました。
大学時代に知り合った彼で、将来は結婚も考えていた筈でしたが、その当時遠距離交際になっていたせいもあるでしょうか、どこか気持ちがずれているような気がしていました。
また結婚するということに対してきちんと段取りを踏んでいくことに迷いが生じ始めていました。
けれど一番の問題は、離れている不安や、結婚することに対する不安をきちんと相手に伝えられない、本当に結婚するならば気持ちを伝えあうことは大切な筈なのにそれができずにいたことだったと思います。
当時は結婚を考えている相手もいましたので。
結婚に関して焦りはありませんでした。
短大卒で就職しましたので、まだ若かったということもあると思いますし、当時結婚を考え交際している相手がいたせいもあったと思います。
ただ自分が若いうちに結婚して早く子どもが欲しいと思っていたこと。
また、勤め先の社風が、女子社員はあくまで男性の補佐、結婚したら退職するべし、といった感じだったこともあり、私も若いうちに結婚したいという願望はありました。
同じ職場の彼は、自信家で強引なタイプ。
出会ったきっかけは、会社主催の催しで、同じ会場係に振り分けられ、一緒に仕事をしたことでした。
終了後のお疲れ様会を兼ねた宴席で、会社のお偉方もたくさんおられる中だったので気後れして、どこに座っていいものかまごついていたところ、よかったらと隣の空席を指してくれて、隣同士になりました。
最初の印象は、少々自信家で強引なタイプに見え、あまりよくありませんでした。
ただその際、近くにいた男性が酔っ払ってだらだらと失礼なことを話しかけてきたときにかばってくれたので、そこで少し印象が変わりました。
はっきりNOとは言えませんでした。
宴席でいろいろと話すうちに、たまたまその日が誕生日だという主人が、この会が終わったら一緒に別のところで祝ってくれないかと言いました。
そういうところも随分強引な方だなと思ったのですが、無下にお断りするのも失礼かと、友人を誘って一緒に行ってもらおうとしたところ、友人から「明らかにあなた目当てなのにとんだ邪魔者になっちゃうじゃない」と断られ。
でもすっぽかすわけにもいかないので、一応待ち合わせ場所には行かなきゃと向かいました。
結局二人で飲むことになって、翌日交際を申し込まれましたが、おつきあいしている人がいるからと断りました。
それじゃ一度だけデートしよう、それで諦めるから、と言われ、遊園地にドライブデートをしました。
それが楽しくて。
主人から別れ際「一度だけと言ったけどまた会いたいねぇ」と言われた時に今度ははっきりNOと言えませんでした。
強引で自信家だと思ったところが、一緒に時間を過ごしていると、しっかりした頼れる人に見えてきました。
そして、とても話が弾むこと。
好きなアーチストが同じだったり、贔屓のプロ野球球団が一緒ということで会話が本当に弾みました。
もう会わないと思うと寂しいような気がして、それまで付き合っていた方とはきちんと別れ、今の夫と付き合うことになりました。
ちゃんと別れてきた、と夫に告げた時、「分かった、あとのことは任せなさい!」と言ってくれたことは今も印象に残っています。
結婚観も似ていました。
結婚を決断したポイントは、最初は欠点にも見えた夫の強引さ。
それが周囲の人をよくリードしてくれる力に見え始め、自分にはこういう頼れる人、決断力のある人がきっと合うのではないかと思いました。
結婚観が似ていたのも大きかったと思います。
結婚したら専業主婦がいいということ、子どもは早く欲しいことなど。
また以前の彼とは遠距離交際で、結婚するとしたら私も地元を離れてそちらに行かなければならなくなります。
夫は地場企業勤務だったので地元を離れることもない、ということもポイントとしてあったと思います。
2人姉妹の長女でしたので、親元から遠くなるのは躊躇する思いがありましたから。
まるで会社の宴会のよう。
私は自分の勤め先がとてもフレンドリーな雰囲気で好きでしたので、夫と社内結婚したことで、これからもその会社や同僚たちと近い距離にいられる、ということが妙にうれしかったです。
私たちの結婚式はまるで、会社の宴会のようでした。
また専業主婦になることが夢でしたので、同じく妻にそれを望んだ主人と結婚できてよかったと思いました。
同じ職場でしたので、人間関係には気をつけました。
私たちの時代は、今のような「婚活」という言葉はありませんでした。
今の若い方がうらやましくもあります。
ただ思い返すと、勤め先にはバドミントン、テニス、登山といったサークルがいくつかあり、また、会社主催の体育大会やダンスパーティ―なども行われ、そうした場所で出会いがあった方もいましたから、若い社員の出会いの場を作ろうとしてくれていたのかと今になれば思います。
夫と出会い、社内恋愛をするようになった、ということで、随分気を遣ったこともありました。
会社は決して社内恋愛を認めていなかったわけではありませんが、やはりあまり会社の人には知られないようにすることに注意を払いました。
もちろん2人とも仲のいい同僚や先輩には話しましたし、そういう方から随分助けていただきましたが、誰もが味方というわけでもありませんし、そういうことでからかわれたりすることを夫が非常に嫌がったからです。
人一倍仕事熱心だった夫でしたので、私がよくない振る舞いをすれば、夫の仕事にも影響するかもしれないと思いましたし、また会社の方からも祝福される結婚がしたいと思いましたので、努めて会社ではそれまで以上に低姿勢に、真面目に、仕事をしました。
若い男性社員からは特段人気はなかった私でしたが、真面目に勤めていたことや、見た目も決して派手にはしていなかったせいでしょうか、年配の、父親くらいの上司の方からは、自分で言うのもなんですが結構評価していただいていました。
ですので、結婚が公になった時に、上役さんや周りの方から夫が、私のことを随分褒められたこと、お陰で社内での自分の人間関係も広がり、仕事上も助かったと言われたことはよかったと思っています。